今日は最高にお天気が良かった。ここ数日雨のないお天気が続いておりますが、今日のお天気は殊更秋らしく空気が澄んでいる感触がありました。こんな良いお天気の日は家の中でじっとしてられない丸子さん。今日も活発です。朝からそわそわ、人の話も上の空。なんだかね・・・・
「 ◎・?▽□¥\(0 0)/・・・・・」なんですね・・・・
『そうっかァ・・・』 意味がようわからんのですが、何かを言いたげ。
『なんで?今日はきちりとお話してくれへんの?』と聞いてみる。
「・・・・・%6&$#▲●◎?^^)・・・」・・・・・・うにゃ?
『う~~~ン、参った!』
僕には今日の丸子さんの気持ちが理解できないんです。何が問題なんだろうと、ここ数日の日報に目を通すが、それらしき原因も問題も無いようである。こんな時に在宅では家族の方がどのように対応するのかと言うと、単に放置するだけしかできないですよね。しかし、我々は認知症のスペシャリスト。それなりの教育や研修は受けてきた。そんな自負心をもって、よう~し、ここは一発、俺の力量で解決じゃ…!とばかりに奮闘する。
奮闘すること一時間。汗だくになりながら丸子さんの気持ちを読み取るべく悪戦苦闘、しゃべりにしゃべり、口の中はカラカラ。それでも丸子さんは何も話してくれない。時々、笑顔こそ見せてはくれるものの、相変わらず抵抗するでなく協力するでなく。ただ黙って僕を見つめているようでソッポむいているのは変わらず。
昼食をはさんで午後からは職員が事務所のドアをノックして入ってくる。彼はいつも何かに脅えるような感じで私の横に来てボソボソと話すのですが、彼曰く、お天気も良いので海に遊びに行きたいらしいのです。総合病院から退院したてのOさんを除いて全員で海に行きたいと言うのです。特に昼から差し迫った仕事(本当はいっぱいあるのですが、ただやる気になれないだけで・・・)も無いので、バス二台でドライブすることとなった。
丸子さんも当然行くこととなるのだが・・・やはり一言も話をしてくれない。
車に揺られること15分。近所の海水浴場へ到着。9月にもなると海水浴客は当然ゼロ。誰もいない浜辺を見下ろす堤防の階段に皆で腰を下ろして海を眺める。遠くに知多半島、伊勢湾中央にある神島、鳥羽や伊勢まではっきりと見渡すことができる。中部国際空港(セントレア)もハッキリと見える。そうこう言っているうちに一機飛行機が飛び立った。そして上昇する中で機首を回転させ私たちの居る方向へ飛んできた。一番最初に私が見つけた機影も次第に大きく、肉眼でも確認できるほど近くなり、入居者の皆さんも目で追えるほどの大きさになった。
絶対に聞こえないとは思うけど、飛行機に向かって叫んでみた。『お~い、ここのばあさん達が見えるか・・・?』 ばあさん達も叫んだ!思い思いの事を。
普段、大声を出すことも無い施設内の生活。そんな生活からひと時だけど童心にかえって波打ち際で波と戯れ、飛び去る飛行機に向かって大声で叫んでみる。少しだけど、日頃の生活から溜まったものが何か出て行ったように感じて帰路に就いた。
『また、行こうね!』 そんな気持ちで車に揺られてきた。次回来るときには丸子さんも何かを話してくれるのかなァ????
久しぶりの丸子さんの登場です。先週末には所用で上京していた関係から施設を留守にしておりました。数日間、本に週末だけ施設を留守にしただけですが、久しぶりに丸子さんとお会いすると、「あんたぁ、久しぶりやなぁ・・・」と一年もお会いしていないような言葉を頂戴してしまいました。認知症の方々は、本当に一日でも顔を見ないと、この言葉を頂戴する。一日、二日なら「久しぶり」だけど、これが一カ月ともなると「あんた?誰?」になってしまうのでしょうね・・・(笑)
さて、今日はお散歩の時間を変更してみました。いつも朝方にお散歩に出かけるのですが、今日は午後、それも夕食前に出かけることとなりました。夕食前にお散歩と言っても、まだまだお天道さんは頭上高く、日も長いのですが、一番不安なことは仕事帰りの家路を急ぐ車が増加することです。こn太陽の家のロケーションが幹線道路沿いにあることもデメリットであることもあって、車の通行量が非常に多いということが挙げられます。今のところ、特に交通事故に遭遇するとかの問題はないのですが、今後、全く皆無ということは言えないのではないかとも考えています。これから先に、交通事故を回避しながら、どのように自由なお散歩時間を確保するか・・・?が問題です。
丸子さんも、健康意識と気晴らしも兼ねて毎日お散歩に出かけます。交通事故や遭難事故を恐れるがあまり、丸子さんを施設内に閉じ込めてしまってはどんどんと認知症が悪化してしまいそうです。
好きな時に、好きなことを自分が思うまま行動できる施設って、理想ですよ!
今日のお知らせでも書きましたが、うちの丸子さんだけではなく、ほかの利用者の皆さんにも自由な意思決定をし、自分の思うがままの行動を可能にするためにも、多数のボランティアさんを募集いたしました。興味ある方は、ぜひ一度お電話をください。お待ちしております。
今日の丸子さん、お買い物に職員と共に道を挟んだ施設前の大型スーパーへ行くこととなった。玄関を出るには事務所前を通るが、その時お小遣いを要望してきた。
「買い物に行ってくるんで、お金出して!」と丸子さん。
「何を買いに行くの?」と事務所
「薬!」と丸子さん。
丸子さんには、事務長が一生懸命、薬は昨日の病院受診の際に貰ってきた事を伝えるが、本人には伝わらない。そりゃそうだよね。薬を受け取るのも職員、管理するのも職員。本人さんは実際のところ薬をもらったという意識がはたらかないのは当然だ。いろいろと説明しながら、お金を本人に渡す。
さあ、お金をもって、数人の利用者さんと共に出発!と言う時に、私の方からお願いを言ってみた。
「丸子さん、僕にお菓子を買ってきて!あられで良いんで、一袋買ってきて・・・!」
「どんなあられ?」といぶかしげに答える丸子さん。
「あのな、これくらいの大きさで(と言いつつ、両手でサイズを示す)ねじってあるあられ!」
と説明する私を横目に「ふ~ん・・・知らん・・・!」と一言残して歩きだしていった。
職員の皆さんに読んでほしいのは、認知症ケアって、本当に細かな気配りが必要であることを知ってほしいのです。病院受診、お買いもの、ドライブなど外出したり、また施設内の日常活動の中でも説明が不足しているように感じる。デイサービスの職員にもお願いしたのですが、自分達は介護をする=イコールお世話をするに徹しすぎる傾向にある。お世話するのではなく共に生活する。感覚がほしいのです。薬は切らすことなく常に病院から貰ってきて施設内で個別に管理されている。お買いものに行ってもお金の苦労や商品の袋づめなど一切心配しなくて良い環境が介護でしょうか?全て、痒いところに手が届く介護は認知症ケアには不適切であると考えます。自分自身に置き換えても日常的な活動の中で不便に思うことはあるはずです。認知症だから、そういった不便は感じないように支援する。という理論は絶対に間違っていると思うのですが如何ですか?
今日は久しぶりにデイサービスの送迎車両の運転手をやった。僕の運転は施設一番安全でスムーズな運転で有名である。(と、少なくとも自分は思っている)アクセルとブレーキングのステップ操作はスムーズで、発進、停車の折の衝撃は一切感じない運転を志している。と、まぁ、自慢話はこれくらいに・・・
今日の丸子さん、車中では他者との会話がはずんでいる様子。ベンチシート隣に座っているM子さんが咳く度に「大丈夫ですか?風邪でもおひきになったの?」を繰り返している。決して悪気があるわけではないが、ただ単に自分の会話を忘れてしまうのである。最初はM子さん、「私の持病みたいなもんで・・・気管支が弱いんでしょうね・・・!」と返答していいたもの次第に返答することが面倒になってきたのか、数回目以降からは何も答えなくなった。それでも、丸子さん、M子さんが咳する度にまた聞くのです。「お風邪ですか?大丈夫ですか?」 『・・・・・・』とM子さん。
まあ、そんなこんなの車中ですから、会話は弾んでいるものの、意思の疎通はまったく取れていない。皆さんが勝手な会話をしながら適当に話がすすんでいく。そんな送迎車両も丸子さんの自宅に近くすすんでいくが、今回の私の送迎は、本当に久しぶりの事で我ながら恥ずかしい話が、丸子さんちの場所を忘れてしまっていた。大よその所在は覚えているが、住宅密集地の中の一軒を路地を回りながら探そうとするが見つからない。う~ん、困った。こんな時は直接当人に聞いてみる。「丸子さん、お家がわからなくなりました。場所を教えてください!」すると丸子さん、辺りを見ながら「ここは違いますよ!この先を右に曲がってください」彼女が指示するとおり路地の先を右に曲がる。言っておくが私たちが使っている送迎車両は商用タイプのバン車両よりも一回り大きく幅も広いスーパーロングである。住宅地の路地を苦手とする車両を右に左に操りながら、車両の角が無くならない様に四方に神経を張り巡らせ、おまけに交通事故を起こさないような細心の注意と同時に車内の同乗者の安全にも注意を払っての運転です。最初に書きましたが、アクセルワークに注意する理由に、送迎車両に同乗する認知症の方々は、特に頻繁にシートベルトを勝手に外してしまう。何度お願いしても、その時は分かりましたと言ってくれてベルトを締めさせてくれるのですが、数分も経つとカチャっと、シートベルトをはずす音が聞こえてくる。まぁ、とにかく送迎車両を運転するということは単に安全運転に心掛けるだけで終わらないところが難しいところです。シートベルト無しに急発進、急停車は危険です。
またまた話が脱線してしまったのですが、結局路地を右に曲がっても丸子さんちは見えてこない。「あ~ら、ここも違うわね・・・何処だったかしら???!!!」と丸子さんはまったく当てにできないお返事。これは困った、困った。とうとう恥を忍んで事務所に電話して場所を聞くか・・・?こんな事を事務所に電話でもしようものなら、電話口ではきっちり教えてくれるだろうが、電話を切った瞬間から職員同士が僕の無様な姿を取りざたして笑いこけるだろうなぁ・・・・と考えている時に偶然にも丸子さんちの玄関。見覚えのある建物を発見。事なきを得た。って感じでした。
このように、認知症を患っている人には目線が変わると途端に見覚えのない場所として迷ってしまうようです。認知症の人が徘徊しながら自宅とは違う方向へ歩き、次第に行方不明になる事故も多く起きている。これは、認知症高齢者の記憶障碍というより失認の方が大きく影響している。例えば私たちが馴染みの薄い都心のデパートでウインドウショッピングに明け暮れ、いよいよお買い物も終わって外に出た時に、いつもとは違う方向へ出てしまった時など、一瞬ですが自分の居場所や方向が分からなくなることがありますが、認知症の方は常にそういう状況の中に暮していると想像してください。私たちは偶然。そういう障碍もなく普通に暮らしていますから、一瞬の迷いとして状況を処理出来ますが、認知症の方は一旦方向が認識できなくなると、途中での修正が効かなく、そのまま迷子になってしまいます。
普段、自分の住みなれた地域でも目線が変わると、全く違ったように認識されると理解してください。決してバカになったわけではないのです。目に映る映像を自分の馴染みとして認識できない様になってしまっただけです。だから支援が必要なんですね。
丸子さん、今日もご機嫌斜め! 今日は特に愛想なし!って様子。朝方のお散歩には参加。9時ちょっと過ぎには入居者の二人と一緒に帰ってきた。普段だと『ただいま・・・!』の言葉があって、笑顔が見れるけど、今日もなし。そのままお友達の三子さんのところへ寄り添うように歩み寄り、職員が差し出した椅子に腰かける。他者の方々と一緒に機能訓練を受けるのは受けるが、どこか楽しくなさそう・・・
で、お友達の三子さんにお風呂の順番が回ってきた。三子さんから一緒にお風呂に入ろう!と誘われていたけど丸子さんは断っている。見るに見かねて看護師が入浴を勧めるが、ガンとして拒否! それとなく丸子さんの肩に手を回すと身震いする。言えば言うほど、頑なに拒否する。三子さん、仕方なく。と言うか、それでも後ろ髪を引かれるように脱衣所方向へ歩き始めた。それでも、丸子さんは知らぬ存ぜぬ!って様子。
は~ぁあ・・・困ったなァ・・・・でも、また先日の様にペルー人職員が声掛けすれば、何の問題もなく入浴するのでしょうか・・・?まあ、放っておこう!っと。
さて、丸子さんは、入浴を拒否し、三子さんをふろ場に残して、とっとと自分の居室へ戻ってしまった。
三子さんは入浴後に必ずお化粧をする。口紅もぬって、おめかしをする。そこへ、デイ利用者のお~い!さん、今日は珍しく活発で行動的。三子さんが席に戻るなり口説き始める。「昔から、あんたのことベッピンやって思とった!・・・ひひひ・・・」 まぁ、なんとスケベそうな笑い!と思いながら会話を聞いていたが、さすが三子さん、怒りもせず上手にいなしてしまう。流石のお~いさん、一本取られてしまった。
さて、それから事もなくお昼ごはんも終わり、お昼からの予定を終了し、そろそろ帰宅準備という頃になって、三子さんが事務所を訪れる。
「ちょっと宜しいですか?お話が・・・・」という調子で私の顔を見る。「どうしました・・・?」と答えながら、三子さんに椅子をすすめ、その横に自分も移動する。私が横に腰かけてお話を聞くと、ここへ来るのも今日が最後ということを また話し始める。 来たきた!いつもの奴だ!と思いつつ、シッカリとお話に傾聴する。ご主人に先立たれたこと。年金生活であること、家族とは別棟で同居している半一人暮らしであること等など。繰り返しお話しする。どうも三子さん、年金生活であることとご主人が先だったことから将来的に経済的な不安があるようだ。三子さんには、ここのサービスを継続しても必要な経費はごくわずかで、残りはお国が支払ってくれるのよ!と、専門家らしからぬアドバイスをさせてもらった。介護保険だの社会保障だの、専門的なお話は高齢者には複雑すぎて理解できないだろうし、特に認知症の方々には余計な不安感を扇ぐことになりかねない。だから、単純明快に分かりやすく、利用者負担は大きな問題ではない、心配する必要もないことを伝えた。 三子さん、何度も何度も同じ問題意識に戻ってしまうのです。一生懸命説明して、理解してもらったように思うが、結局はまた振り出しに戻ってしまうのです。おおよそ30分程、同じ悩みごとの相談、同じ内容の回答、同じ相談、同じ回答を繰り返してようやっと本人さんも納得(本当は納得できていないと思うが、彼女なりの僕への心配りなのでしょう。分かった振りして、「お時間をとらせてしまって・・・ごめんなさい!」と言ってご自分の席に戻られました。
認知症の方の問題は、なかなか物事をスムーズに理解するには至らないことがあります。三子さんが自分の実の母親なら、僕も冷静に対応できたでしょうか?とても難しいと思います。実母であれば遠慮もなく、繰り返しの内容に面倒な気持ちが先に立ちそうです。認知症高齢者ケアは親族には非常にきびしいモノがあることも、この件を想像していただければ理解していただけると思います。