今日は丸子さんと昼食前に一時間をお散歩に出た。近所の公園まで幹線道路を使って歩きながら思ったのが、日本の道路整備に関して、高齢者にはとても使い勝手の悪い設計である事を今更ながら強く思った。
第一に、車道と歩道の分離が確実に実施されていない。
第二に、歩道と車道の段差がきつすぎる。
横断歩道を利用するにも、歩道から横断歩道に至るまでにかなりキツイ傾斜が存在する個所が多い。
第三に、歩道の舗装表面が荒れていて(街路樹の根や歩道下を流れる巨大排水溝のための鉄製スリットタイプ固定蓋など)
車いすや杖歩行には転倒のリスクが大きい。
第四に、歩道上に障害物が多い、例えば沿線沿い商店ののぼり旗や看板、歩道橋の支柱が設置され、歩道が極端に狭く
なっていたりする。
書き出せば限がないほど日本の道路事情の貧弱さが存在する。国土が狭く、古くからの入り組んだ敷地形状の中を区画整理出来ているところはまだしも、旧道の拡幅工事だけで対応している状態では、余裕のある歩道を確保する事も困難でしょう。ただ、高齢者に関わらず身体に障碍を抱える人々にとって、日本の道路を利用するには危険が多すぎるように思いますね。アメリカのような広大な土地で、街自体も荒野の中に新しく作られているような環境だからこそ、道路を中心に宅地開発は可能ですが、日本のように宅地開発が先に行われ、次に道路整備をする逆パターンでは、歩道の役目が侵害されていくのも分からないではないですね。
今日は丸子さん、貯め撃ちです。一気にVol.18,19と書くこととなりました。
敬老の日を挟んで全国的に大型連休の初日にあたる今日の土曜日。うちの丸子さんだけではなく、他にも実の息子さんが面会に訪れました。ちょうど入浴中だった丸子さんでが、普段だと入浴も渋るのですが、今回は偶然にも息子さん家族が訪れることは知らないはずなのにお風呂に入っていました。髪の毛もシャンプーして爽やかな雰囲気。ドライヤーで髪を乾かすのもジレッタイような様子で職員のドライヤーの風を受けていました。
もう一人の利用者さんは息子さんに連れられて主治医の先生を受診。うちの栄養管理が良いのか、職員の努力の賜物か?患っていた糖尿病も改善し、後しばらくで血糖コントロール薬が不要になりそう!と先生に言われて帰ってきました。息子さんも大層喜んで、今後に期待したいと満足げ。
二人の利用者さん、共に実の息子に会えて、さぞや嬉しかったのでしょう。息子さんが帰られた後も終始にこやかな顔でした。
『丸子さん、今日はご機嫌だねエ!』と尋ねてみると
「息子が来てくれたん!」と喜んだ声で答えてくれた。
『いつ来てくれたん・・・?』と、わざと引っかけて聞いてみると
「昨日・・・!」と言う返事が返ってきた。
『・・・・・・・?』 ふにゃ?今日じゃあなかったっけかぁ・・・・??と思いながらも聞いてみた。
『昨日来てくれたんかア・・・? 今日じゃアなかったの??』
少しだけじっと考えていた丸子さんだけど、思い出したらしく
「今日やったなァ・・・」と話す。
それから二人でふざけて会話している横から、もう一人の息子の面会のあった利用者さん
「息子はいくつになってもええなぁ・・・」と言った。
「息子はええわア・・・・」と丸子さんもポツリと呟いた。
二人とも本当にうれしそうな顔をしている。息子さんを見送る丸子さんを玄関のモニターテレビで見ていたが、僕は名残惜しそうで、何度も何度も手を振る丸子さんの後姿を思い出した。
認知症高齢者の皆さん、グループホームに入っても決して幸せではない。家族みんなと一緒に暮らせることが一番幸せなのです。でも、一緒に暮らしていると家族が崩壊してしまうほどの問題も実在します。少しさみしい思いはするだろうけど、この関係が一番幸せなのかもしれません。小学校の国語の先生が教えてくれた言葉を今でも思い出します。「親」という漢字は、学校に出発する子供を親は木の上に立ってまで見送る。と書くんだよ!と言う言葉でした。
このタイトルが、何とも言えない響きではあるが、今日の丸子さん。正確にいえば、もう一人の丸子さん。(太陽の家には沢山の丸子さんが居るのです)今日は土曜日ですから、デイサービス利用者も若干少なめでした。お昼前にいつもの馴染みのばあさんとスキンシップ(毎度の事ですが、ハグをしたわけです・・・)。そんな現場を丸子さんは訝しげ眺めながら言いました。
「冗談はええけどさ・・・○○さん・・・どうなんさ!?」この言葉だけでは普通の人は意味が分からないと思いますし、少し過去の状況を説明しないと話のあらすじも理解は出来ない事ともいます。
実は、私の母親も加齢による膝の関節の変形による痛みから要介護認定を受けていまして、この太陽の家デイサービスセンターを一時期利用していました。(今は、もっと専門的なリハビリ中心の施設を利用していますが)
この丸子さん、私の母をその頃から、私の妻と勘違いしてしまっているのです。私の母が、太陽の家に顔を見せなくなったことは、丸子さんには理解できるのですね。しかし、未だに母を妻と誤解したままで(何度説明してもリセットが効かないのです)おまけに、妻(?)不在の中で堂々と他の女性(利用者のばあさん)をハグするのですから、これは正直、丸子さんにとって見過ごすわけにはいかないのでしょうね・・・嫌味を込めて言われてしまいました。
あはははは・・・・・( 難しいですね!)
丸子さん、今日も昨日に引き続き体調不良の訴えです。看護師が検温をして36.1度ですよ!熱は無いですよ!と言っても聞かない。絶対にどこか体に悪いとこがある!と言い張る。何を言っても、がんと聞き入れない。暫くすると、一人で玄関まで歩いていく。周りにいる職員は横目で確認しながら、次の動作を見守る。
丸子さん、玄関の自動ドアのセンサーに届かないので腹立ちまぎれにドアを一回だけ叩く。でも、悲しいかなドアはビクともしない。この時点で、看護師が介入。傍に駈け寄り話しかける。玄関脇の椅子に腰かけてもらうように声がけをしている。丸子さん、看護師の言葉に従い、玄関脇の椅子に腰かけながらも、非常につらそうな顔を見せながら座っている。
私も見るに見かねて傍によって話を聞くこととした。
『丸子さん、どないしたん・・・?どっか痛いの?』と、彼女の顔を覗き込むように尋ねてみる。
「そこらじゅう・・・」と丸子さんは顔をしかめて答えてくれた。
『ふ~ん、痛いんや!かなわんなぁ・・・痛いのは・・・ほんで?何処へ行くの?』
「前の薬屋へ行って、薬買ってくる!」と丸子さん。今日は結構、喋ってくれる。
『そっか!薬屋なぁ・・・丸子さん、もうちょっと待ってくれへん??女の子がもうすぐ休憩から戻ってくるんで、それまでここで待ってえな!?』と問いかけてみる。
「なんで、待たなあかんの?」と丸子さん
『なんでって・・・前の道で車にひかれても困るやろ!?』と返す。
「ええのや!自殺してくるんや!」と、丸子さん、とうとう投げやりな発言をし始める。こんな時は何を言っても聞き入れてくれない丸子さんだから、いっその事自由に行かせてあげれば良いかもしれないと考えて問いかけてみる。
『よっしゃ!分かった! それなら一人で行ってきてええよ!」と言いながら玄関のドアを開ける。自動ドアを押さえながら丸子さんの表情を確認していたが、一向に椅子から立ち上がろうとしない。そんな丸子さんに再度外出を促すが同じく、椅子から立ち上がろうともせず、一言つぶやいた。
「あんたらが、知っとる中で自殺はできへん!」 この言葉を聞いて、内心『よっし!』と感じた私は、畳み込むように丸子さんに二階の冷蔵庫に薬が常備されているか見に行こう!と促した。多少は嫌々ながらではあったが、丸子さん素直に私の案内に従ってエレベーターに乗ってくれた。あとは、二階の居間の冷蔵庫に冷やしてあるオロナミンCを飲んでもらえばOKだ!