


82歳、男性、若いころよりウイルス性の疾患を患い四肢機能障害の後遺症を持つ。本人の努力により一般企業に定年まで就労し現在に至る。歩行には若干の不安定さがあり、一部車椅子を利用しながらの移動を行っている。最近、物忘れがひどくなり、同時に被害妄想が出現、自分で隠した金銭を忘れ、親族が盗っていった。と訴える。
現在一人住まいで成年後見人もついていない。金銭管理の面で非常に苦心する場面が多く、本人も自分が稼いだ金を自分の思うようにつかえない不便さに苛立ちを感じている。毎日、手持ちの金がないので銀行を訪れては窓口で問題を起こしている。
担当のケアマネジャーも、銀行との連携を求め、何度も話し合いを行い、その都度、水分補給やケアマネへの連絡をとるなど非常に協力的な対応を行ってくれている。
この方の問題は、独居生活であり、経済的な管理のすべてを遠く離れた親族が行っているにも拘らず、その理由や原因を正当に理解できないために、親族が悪者となってしまっている。同時にまだらな認知症の影響で、銀行の窓口に日参することである。銀行も同じ町内にある環境であるが車いすでの移動に決して簡単に行ける距離ではない。高齢者が四肢の機能障害を抱えて車いす移動するには、この時節柄、脱水症も懸念される。その点でも、周りの者は、出来る限り外出を控えてもらいたいと願っている。
地域連携の施策の下、認知症の人の意思をしっかりと受け止めてあげたいと願うが、毎日のように繰り返される行動に、その尻拭いを行うには、限界が迫っているのも事実である。 それよりも、この状態を継続する中で、不慮の交通事故や脱水症、金銭の紛失などの事故や事件が起こってからでは元も子もない。
このケースの場合、この方に関わる者としては、銀行のスタッフ、通所介護のスタッフ、担当ケアマネの三者が絡んでくるが、それぞれに立場と出来る範囲に限度があることにより、上手く認知症の人が普通のような生活をおくるには至っていない。まだまだ制度上の課題や地域資源の枠が狭くて支えきれない現実があるようだ。認知症の人のライフサポートモデルも、まだまだ絵に描いた餅である。


また自転車の話で申し訳ない。今日は結構遠距離を走った。海から山へと、箕田の海岸を河芸まで走り、そのまま芸濃町へ、306を使って亀山市内、亀山城跡を通って関の古い町並みを抜けて地蔵院へ、帰りは一号線を走り帰ってきた。
天気予報では風は強くならない予報だったにもかかわらず、走り始めたら向かい風が強くしんどかった。おまけに、家に帰って昼食を食べ終えたころに台所の外で者が倒れる音がして見に出たら、大きな蛇がとゆを伝って地面に降りようとしていた。
やいのやいのと叫びながら、何とか取っ手の長い火バサミでつかんで裏の田んぼにの用水に放り込んできた。自分、蛇年生まれなのに蛇が怖い。毎年、同じような時期に家の周りに出没する蛇騒動。僕は苦手だけど、この家を守る蛇なのかもしれない。しかし、それでも遠慮する。
急激に認知機能が低下した男性、78歳。ラクナ梗塞多数、アルツハイマー型認知症+脳血管性認知症。自宅にいることや妻が認識できなくなり混乱が増大し、易怒性と幻覚が出現。起き上がりが困難となり車椅子生活、食事、排せつ、入浴ともに全介助。この状態に至るまでの期間が3年程度。
この男性認知症高齢者の介護は非常に難しい。易怒性は時として激しく、周りの利用者の気分を阻害し不安にさせてしまうほどの大声でわめき散らす。年齢も若いことから体力はしっかりと維持されているが、3年前のてんかん発作による転倒以降、歩行が困難となり車いすでの生活となる。
この人に何が必要か?この人の求めるものは?
この課題を探るのには、まずは信頼関係の構築が一番必要と考えられる。意思の疎通のかなわない人に対して信頼関係って構築可能なのか?と思い込んでしまうが、記憶障害を抱えているとしても、意思の疎通ができないにしても、繰り返しのアプローチとしっかりと相手を受け止めることから、次第に信頼関係は出来上がってくる。不穏状態の時に話しかける技術も学んでいった。相手の気持ちを読み取るスキルも学んだ。そして一番大きな功績として、この人の排便周期をコントロールできることがあげられる。今まで、かなり不定期に、言ってみれば「見境なく」という表現が相応しいほど乱れた便通に家族、職員共々振り回されていた。
この排便管理に効果があったのは、下剤の服用を制限したことだった。便通が促されないから下剤を繰り返し、毎日毎晩服用していたのを、週二回、日曜夜と木曜夜に減らしてみた。回数と量を制限することが、この人の便通を安定させ、排便周期がしっかりと保てるようになった。このおかげで、在宅での排便はなくなり、家族の介護負担はかなり軽減された。
そして、二次的な副産物として、精神の安定も以前よりは改善方向にある。成立しない会話も、成立しているように本人は納得できる状況となり、笑顔が多くみられるようになった。この点でも家族の喜びようは他にない程であった。
認知症の人であっても、働きかけの方法によっては、認知症の人の気持ちを安定させ、他者(職員を含む)へ与える不快感も減少させることができる。これすなわち医療・福祉・家族の連携のたまものであり、うちの職員に関して言えば、チームケアの充実の賜物と考えられる。
身体機能は問題なし、ただ短期記憶の回路がめやくちゃに疎外されて意思の疎通を取りにくい一人の認知症の人をケアしている。会話は行えるが、複雑な言葉や単語を多く並べてしまうと理解されなくなる。一つの行為を説明するにも理解を促すには、ひと苦労する。
この間は、自宅に帰ると言い始めた。認知症の人の多くは自宅に帰らなければいけない。と言う「義務と責任」を強く表出させることがある。この人も同じく、家に帰るために迎えの者を屋外で待つ。と言い張って聞かない。介護の専門職と言われるグループホームの管理者、居宅のケアマネジャー、デイサービスの介護職員等4人体制で説き伏せようと悩む。単純な発想で「上手に騙す」ことが可能であれば比較的楽であるが、この人は違う。ガンとして屋外の通り沿いに立ちすくみ、我々の言うことを聞き入れてはくれないのだ。
そんな頑なに室内に戻ることを拒否する人を、強制的にまたは力ずくで室内に戻したところで、恐らく感情的になり余計に問題は拡大していきそうである。いろいろな糸口を探しながら、話しかけること30分。ひょんな事から、一つの糸口をつかんだ。それは夕食であった。迎えの人が来るまでに、夕食を準備しているので食べていってください!に反応した。それでも、日本人特有の相手の行為に甘えることを良しとしない気質が邪魔をして、素直には従ってはくれない。次に、せっかく準備したが捨ててしまうのは「もったいない」に反応があった。
少しずつではあるが、夕食の誘い水にのっかり、徐々に室内に戻ることを承諾し始めた。体の向きが玄関方向に変わったら、こちらの勝ち。後はゆっくりと丁寧に食事をとっている最中に迎えの人が来た場合には、きっちりと連絡するなどの約束を交わしながら、のんびりと食事を楽しめるような配慮を行い、テーブルについていただけた。
これが認知症の人のかかえる障害である。実際は昨日も、一昨日も、全く同じ状況を繰り返していることを覚えていない。そして、その度に同じように不安になり、一人で放っておかれる怒りを家族に対して抱き、我々スタッフ(介護職員とは認識できていないが)に迷惑をかけることに憤りを持ち続けている。
これら一連の不可解な行動に対して、本人は何の責任もない。しかし、周りに与える影響はとても大きなものがある。認知症の人を家族で支えることのむつかしさとしんどさは、こういう点でも理解できる。認知症の人の介護には、しんどいむつかしさがある反面、その人に対して上手く支援が成功したときの達成感は他に例え難いものがある。これらの積み重ねが専門職としてのプライドに変わっていく。
何にしろ「熱意」ってのを、僕は重視している。熱過ぎるってのも困る面を持ち合わせていることは確かではあるが、それでも熱い人間が大好きである。先ごろ、NHKのBSでも「Cool!Japan」って番組の中で、日本の持つクールなモノを紹介している。
クールって直訳すれば「涼しい」とか「冷たい」となるが、このクール。意外や意外、全く逆の日本人が熱く燃える部分を取り出し、それを外国人が「カッコいい!」と感じるモノを紹介している番組なのだ。
言葉の使い方としては逆でも、熱い、独特なこだわりが外国人が持ち合わせていない、日本独自の文化であると称賛している。先ごろでは、日本政府も日本の観光誘致にこのクールなジャパンを広く海外に向け発信している。
認知症ケアに対しても、日本の認知症に対する専門性は欧米に引けを取らない段階に達していると思える。ただ単に制度的には介護保険をなまじっか採用したあまり、その固定枠に縛られ過ぎて、その制度上のほころびには、まだまだ手が回らない状況ではあるが、それでも僕は世界に自慢できる認知症ケアを浸透させてきている日本を褒めてあげたい。
しかし、この熱意、まだまだ日本人の根底に根差していない。今なお、一部の者達によって先導され、それに踊らされ、熱意を持ったような錯覚を感じているだけの者もいる。特に協議会などの同業者の構成する団体などをみていると、その辺の他人任せな日本人の悪い面が大きく表面化されてしまっている。出る杭は打たれる!という格言を気にするあまり、出るタイミングばかりを計って。結局、何もせずに傍観者で終わってしまう。そんな日本人の悪いくせが、やはり根強く蔓延している。
これから将来を担っていこうとする若者たちよ!勇気を振り絞れ!人間一人ではできないことも束になれば、なんでも動かすことは可能である。青年よ大志を抱け!だよ・・・