このタイトルが、何とも言えない響きではあるが、今日の丸子さん。正確にいえば、もう一人の丸子さん。(太陽の家には沢山の丸子さんが居るのです)今日は土曜日ですから、デイサービス利用者も若干少なめでした。お昼前にいつもの馴染みのばあさんとスキンシップ(毎度の事ですが、ハグをしたわけです・・・)。そんな現場を丸子さんは訝しげ眺めながら言いました。
「冗談はええけどさ・・・○○さん・・・どうなんさ!?」この言葉だけでは普通の人は意味が分からないと思いますし、少し過去の状況を説明しないと話のあらすじも理解は出来ない事ともいます。
実は、私の母親も加齢による膝の関節の変形による痛みから要介護認定を受けていまして、この太陽の家デイサービスセンターを一時期利用していました。(今は、もっと専門的なリハビリ中心の施設を利用していますが)
この丸子さん、私の母をその頃から、私の妻と勘違いしてしまっているのです。私の母が、太陽の家に顔を見せなくなったことは、丸子さんには理解できるのですね。しかし、未だに母を妻と誤解したままで(何度説明してもリセットが効かないのです)おまけに、妻(?)不在の中で堂々と他の女性(利用者のばあさん)をハグするのですから、これは正直、丸子さんにとって見過ごすわけにはいかないのでしょうね・・・嫌味を込めて言われてしまいました。
あはははは・・・・・( 難しいですね!)
丸子さん、今日も昨日に引き続き体調不良の訴えです。看護師が検温をして36.1度ですよ!熱は無いですよ!と言っても聞かない。絶対にどこか体に悪いとこがある!と言い張る。何を言っても、がんと聞き入れない。暫くすると、一人で玄関まで歩いていく。周りにいる職員は横目で確認しながら、次の動作を見守る。
丸子さん、玄関の自動ドアのセンサーに届かないので腹立ちまぎれにドアを一回だけ叩く。でも、悲しいかなドアはビクともしない。この時点で、看護師が介入。傍に駈け寄り話しかける。玄関脇の椅子に腰かけてもらうように声がけをしている。丸子さん、看護師の言葉に従い、玄関脇の椅子に腰かけながらも、非常につらそうな顔を見せながら座っている。
私も見るに見かねて傍によって話を聞くこととした。
『丸子さん、どないしたん・・・?どっか痛いの?』と、彼女の顔を覗き込むように尋ねてみる。
「そこらじゅう・・・」と丸子さんは顔をしかめて答えてくれた。
『ふ~ん、痛いんや!かなわんなぁ・・・痛いのは・・・ほんで?何処へ行くの?』
「前の薬屋へ行って、薬買ってくる!」と丸子さん。今日は結構、喋ってくれる。
『そっか!薬屋なぁ・・・丸子さん、もうちょっと待ってくれへん??女の子がもうすぐ休憩から戻ってくるんで、それまでここで待ってえな!?』と問いかけてみる。
「なんで、待たなあかんの?」と丸子さん
『なんでって・・・前の道で車にひかれても困るやろ!?』と返す。
「ええのや!自殺してくるんや!」と、丸子さん、とうとう投げやりな発言をし始める。こんな時は何を言っても聞き入れてくれない丸子さんだから、いっその事自由に行かせてあげれば良いかもしれないと考えて問いかけてみる。
『よっしゃ!分かった! それなら一人で行ってきてええよ!」と言いながら玄関のドアを開ける。自動ドアを押さえながら丸子さんの表情を確認していたが、一向に椅子から立ち上がろうとしない。そんな丸子さんに再度外出を促すが同じく、椅子から立ち上がろうともせず、一言つぶやいた。
「あんたらが、知っとる中で自殺はできへん!」 この言葉を聞いて、内心『よっし!』と感じた私は、畳み込むように丸子さんに二階の冷蔵庫に薬が常備されているか見に行こう!と促した。多少は嫌々ながらではあったが、丸子さん素直に私の案内に従ってエレベーターに乗ってくれた。あとは、二階の居間の冷蔵庫に冷やしてあるオロナミンCを飲んでもらえばOKだ!
最近の丸子さんに変化がみえ始めて数週間がたつ。この前までは鏡に写る自分の姿に話しかけていた丸子さん、最近では、そんな鏡の中の自分に恐怖感を覚えるようになったのか。私達にこぼすことがある。
「あの人、いつも私の周りにいるのよ!」と。
以前まではお友達として話しかけていた相手(この場合、鏡に写る自分の姿ですが)、最近では少し煩わしくなってきたようで、なぜいつまでも付きまとうの?!と言わんばかりに鏡の相手をにらみつける。
丸子さんの今の様子を聞いて、この文章を読む人々は、どのような印象を抱くのであろうか?恐らく、実際の丸子さんを紹介したとして、認知症を見ぬける人は少ないのではないかと思う。それ程、本人は普通のばあさん(と言うより、奥さん)なんである。歩くことも、話すことも出来る。他者の話しかけにしっかりと答える事が出来る。私のちゃちな芸に対してもそれなりの反応を示して笑ってくれたり、批評してくれたりする人からは決して想像できない姿がそこにはある。
認知症の恐ろしさと言うか、認知症介護の難しさを感じてしまう。
そう言えば、認知症の症状には中核症状と周辺症状があるということを学んだが、この状態を放置し、難の精神的な支援をしなければ鏡の相手に物をぶつけたり、その相手に向かって暴言を吐いたりしてしまう。つまり、暴言、暴行の問題行動があると判断されてしまうのです。認知症グループホームにおける専門性とは、この時点で心の安定を図るための処置をするかしないかで決まってしまうことなのです。
医学の世界にこんな病名があるのだろうか?最近の僕は、やたらめったら眠い。今はテスト勉強中の身であり、少しでも勉強をすべき大切な時間。勉強机に向って本を読み始めると眠くなる。まぁ、昔から勉強は大の苦手。その後悔を繰り返さないためにもと思い資格取得に向けた勉強中なのだが、やはり睡魔には勝てない。おまけに、最近は午後になると熱感があり、体全体に汗があふれる。額に触れてみると若干の発熱があるようだ。
一度、体温でも測ってみて結果次第によっては、病院の門をくぐろう!と、思いながら体温計を脇の下に突っ込む。
『 35.4 ・・・・・?!』熱はない。熱が無いって・・・?それなら、この嫌な感じの汗は何???と考えながら。そうか・・・!ただ単に仕事したくない!
仕事に対する拒否反応が出ているだけか・・・
仕事がきらい!との思いは無いのですが、最近目がかすむようになって(加齢現象?)書類とパソコンを交互に見たりすることがとても辛くなってきました。老眼鏡なる物にも頼ってはいるのですが、これが何とも使い勝手が悪い。遠くのものが見えない。人間の目やその他の機能は本当に良く出来たもので、失くして初めてその重要性に気がつくものです。視力調整ができにくくなると言うことが、これほど不便なこととは知らなかったです。
丸子さん、今日も健在です!
しかし、どうも若い職員のお笑いはネタは苦手なご様子。「何事・・・!?」と言わんばかりに黙っ~てみていました。
えっ?何を・・・?・・・・・そっか!突然こんなお話を書いても分からないですよね!
今日の太陽の家は敬老祝賀会を開催したのですが、その中の男性職員による余興を見てる時の丸子さんの様子です。兎に角、今回の男性職員の余興のネタは?????だった。まったくもって申し訳ないが、仕込んだ小道具が年寄りには見にくい。素材が理解しにくい。ついでにテンポが悪い。と三拍子そろい踏み。まあ、相変わらず自分たちだけが楽しんでいる情景だった。男性諸君は、今回の余興に関しては反省しましょうね!
まぁ、そんなわけで、アルツハイマーの利用者なんぞ「こんなん、何にも面白くないわ!」と言ってしまうような状態に、見るに見かねて僕自身もチャチャを入れた。そのことによって、余計にドタバタは加速化され収拾がつかなくなった。本当にお年寄りをもてなすことは難しい。耳は聞こえない、目は見にくくなり、今の時代の流れにも精通していないお年寄りを楽しませることは難しい。余興として人を楽しませるには、緻密な計画と練習が必要なんでしょうね。
さて、丸子さん、自分勝手に部屋に帰るわけにはいかない風の気配りで、ただ黙ってジっとしててくれたのですが、おおよそ1時間の余興(もちろん男性ばかりではなく、女性たちのハンドベル演奏には反応は良かった。)の後、余興も終わり、ひとり欠け、二人欠け・・・と徐々にグループホームの利用者さんは居室に向かって帰って行った。ちょっとバツが悪いのか、しきりと男性職員たちはデイサービス利用者さんに詫びている。
一階のデイルームでは、そろそろご帰宅準備に取り掛かろうと言うとき、エレベータがあ降りてきた。案の定、丸子さん。手提げポーチを持ちどこかへ行きそうな雰囲気。
久し振りの行動に出たぞ、丸子さん。
予想通り、出くわす職員という職員全部に前の薬局に買い物に行ってくると言っている。ここのところお買いものへ行く要望も少なくなっており、ある程度落ち着いてきたのかな??と思っていたが。ところがどっこい!です。やはり、前に買い物に行ってくるから預かり金を出してくれと要望された。ある職員がお話を聞きはじめるが一向に聞き入れてくれない。それどころか怒り始める。もっとも無理ない話で、特に何もやることもなく、夕食前の空腹感からお買いもの癖なんだろうが、僕だって同じように腹が減ればイライラも増してくる。あと一時間弱で夕食の時間。そんな時間に物を食べれば、夕食が台無しになってしまう。一人の職員が肋間神経痛の痛みを緩和させるべく、居室に買い置きしているけい皮鎮痛湿布薬を貼ってあげるよ!と言いながら、居室に手をつないで歩き始めた。
別に、今日の余興が原因で、丸子さんのいつもの病気が出現したわけではないが、こんな風な症状は時々出現する。本当は、頭がボーっとしていて、おそらく気持ちもすっきりとしない状態なんでしょうね。どう表現すれば理解しやすいだろう・・・・?
つまり、我々の超過密スケジュールで働いたあとの数日を寝て過ごした後の感覚と似ていると言えば理解しやすいかもしれないが、恐らく本人さんはボーっとした感覚が気持ち悪いんだろうと思う。それでは、この気持ち悪い状況をどのように改善してあげるのか?
1.本人の気のすむまま自由に外出させてあげる。
2.他ごとにご本人の興味の方向を変えてあげる。
3.体を動かして覚醒を促進させる。
4.縛って座敷牢に放り込む。
(だんだん、ケアマネジャーのテスト問題みたいになってきたが、介護の世界に正解はないとよく言う。この場合も同様で、気のすむまま外出させてあげると言うのも、交通事故やら遭難というリスクが常に見え隠れする。言ってみれば、利用者さんを見守る義務のある施設としての立場からの視点である。第二の対応策である興味の方向を変えてしまう技法も何だかしっくりと来ない。利用者さんをだましていることと同じ意味から考えても、方向を変えるんではなく、その場の雰囲気をかえる。話題の転換を試してみる。ひょっとすると、丸子さんのような状態の認知症高齢者には一番納得がいく解決策かもしれない。間違っても縄で縛って、座敷牢に放り込まないように! 言わずと知れた身体拘束であり、精神的な虐待でもあるこの行為は決して許されるものではない。そして、認知症高齢者への対応として、介護者の押さえ込もうとする手法は、逆に火に油を注ぐ結果となることを忘れてはいけない。不安定な気分は更なる不安定要素を与えているような結果となる。結局のところの丸子さん、女性職員がお供して、前のショッピングセンターへお買い物にいくこととなった。