認知症の介護の中で、私たちが本来、やらなければいけない支援とは?
それは、認知症の人の中核症状を少しでも緩和してあげるための支援。
認知症の中核症状の代表的な病識として、短期の記憶障害、見当識の障害があり
それにより認知症の人は不安感を抱きます。
通常、認知症でない人は、それらの病識に対して、自分なりに客観的な要因を考え、整理し納得することが出来ます。
例えば、睡眠時間がいつもより長く、日中の日の明るい時も部屋を閉め切った状態で寝てたからだ・・・!
または、酒を呑み過ぎて酩酊状態だったから・・・等のような理由です。
しかし、認知症となってしまう事で、この客観的な病識の理解が出来にくくなり
結果として、自分自身に自信が持てなくなる。不安になる。のです。
ここで、問題となるのが、過去の記憶が健在な場合、私たちは、その人の過去の記憶を大切にし
少しでも本人の自身につながるような事案に対して、感覚的に呼び戻してあげる工夫が必要です。
うちの虹の丘のグループホームでは、このような認知症の人の得手不得手を見極め
特異な部分をほめる、そして、普段の生活の中でいかしてもらう事で、本人の自身回復に役立てています。
これにより、それまで曇っていた顔つきが、極端にやわらかくなってきます。
わたしは、このように認知症の人の役割づくり、自信回復を中心に行うことで
認知症の人のBPSDは発生しないのです。
遅ればせながらですが、皆様、新年、明けましておめでとうございます。
毎年、年末のドタバタの中、なんとかやりくりして正月を迎えることが出来ています。
これは、非常に有り難い事である反面、毎年、新年の抱負と誓を
その年の終わりには達成できずに反故に終わってしまう。そんな繰り返しを反省するわけですが・・・
とにかく、今年一年もしっかりと足場を固めて、正直に生きて行こうと思っています。
どうか本年も皆様のお力添えを頂けますよう、心よりお願い申し上げます。
さて、私自身も年々、歳を重ね、世の中では事業継承に向けての備えを整える年齢となってきたようです。
私あてのメールもしかり、ダイレクトメールでも、色々なコンサルからM&Aの誘いがあります。
そして、昨日の私のお休みには、直接、自宅に名刺をもったコンサルタントの税理士なる人物が訪ねてきました。
私は、この福祉事業を行う中で、M&Aと言うものが大嫌いでして、話を聞く気にもなりません。
そうそう、名刺をお返しし、お帰り頂いたのですが、そのあとから非常に気分悪く、妙にむしゃくしゃした気分となったのでした。
M&Aとは、簡単に言えば「企業買収」のことで、事業運営する中で、いろいろと運営母体の困難に別の企業が力添えを行うと言うもので
その中には運営資金の枯渇に対し資金援助をするとか、私のように高齢経営者の次の世代へむけて事業合併をするなど。
こんな小さな事業所でも、大手の企業のように事業運営に対するいろいろな声掛けが行われるのです。
しかし、私が一番懸念しているM&Aのデメリットってのが、社会福祉に対する理念の継承が出来にくい点です。
太陽の家は。デイサービスもグループホームも、私なりの介護理念をもって運営しているつもりです。
職員さんにも、この理念は言い続け、これが「うちのカラー」と言えるようになってきました。
20年近くの年月を共に働き、刷り込んできた理念を、事業継承の名のもとに、全く赤の他人に
たとえ相手が経営のプロであって、金儲けの上手な企業であるとしても
うちのカラーごと、継承してくれるわけではない。
私は、うちに施設で苦労を共にしてきたスタッフを、私が居なくなって以降も
継続して運営してくれるよう、すでに段取りを行っている。
分けのわからない、飛び込みで税理士が営業に来る。そんな失礼なことは無いと考えているのです。
事業を継承するのは、うちのスタッフ達で、全くの赤の他人に売り飛ばすようなことは絶対にない!と
硬く自分に誓ったのでした!
認知症の人のケアで、誰もが対応に困る帰宅願望についてお話します。
帰宅願望って言葉自体、最近は使わなくなってきてますが、
施設に入所されている方だけでなく、自宅にてケアを受けている方の中でも
「家に帰らせてもらいます・・・」ってのもあるのです。
この言動の根本には、認知症の人の中核症状である記憶の障害、見当識の障害が関係します。
自分が今いる場所が分からなくなり、今の状況を理解できず、時間も季節も見失ってしまえば
誰だって不安になります。私たちでも、健康不良の折に時間も場所も分からないような状況では
不安感からイライラが起こります。認知症の人にも同様の不安感、イライラが発生します。
この不安感、イライラを削除出来れば、家に帰る!思いは緩和されます。
この不安感解消、イライラ解消の方法を見つけることが難しいのですが、
とにかく、帰りたい気持ちを否定しないこと!
そんなイライラ感を共有することから始めます。
相手の気持ちに寄り添いながら、今の現状を説明し、心配することもない!と思ってもらえるように働きかける。
帰宅願望に対する支援は、介護側に根気を要します。
じっくりと諦めず、繰り返しの言葉かけになりますが
その人の思いに寄り添って、共に寂しい、不安な状況を分かち合いうつもりで話を聞いてもらうことです。
カンファレンスってご家族には馴染みない言葉かもしれませんが、私たち介護職にとっては
非常に重要で、その時の認知症の人のケアの課題等を検討し、介護方針を共有するために
非常に重要な会議となるのですが、このお話は、そんなカンファレンスの中で出てきた面白い(?)
事例をご紹介しようと思います。
今、介護の現場で困っている事、何かありますか?と言う問いかけに
実は、Kさんですが、深夜の12時、1時に居室から起きてくるんですよ・・・
『そうですか、深夜に居室から徘徊のスタート・・・?」と聞いてみると
それほど大した問題ではないのですが、良質な睡眠がとれていないようで心配で・・・と返ってきた。
それで、Kさん、日中に居眠りや昼寝等の睡眠をとることはあるのですか?と聞いてみたら
日中に傾眠することなく、ずっと活動しているらしいのです。
それでは、就寝は何時ですか?と聞いてみたところ、夕食を食べ終えて直後の6時半~7時頃だと言う。
ここまで話を聞いていただければ、私が言おうとすることをご理解いただけると思いますが、
カンファレンスの参加者にお話ししたのは、夜、早い時間帯から寝床に入れば
誰だって夜中に目覚めますよ!
レム睡眠障害やら、昼夜逆転等の雑多な情報ばかりで、逆に単純明快な回答に行きつかなかったようです。
僕は、こんな職員を責める気にはならず、共に笑いながら、いたって健康的な認知症のKさんの生活を
これからも大切に見守ってあげたいですね!と締めくくった。
さて、このような場合、私ならこうする!と言う方法を解説するなら
出来る限り就寝時間を遅らせる。夕食後の団欒の時間を長くする。しかし、周りの人も結構早くから居室に入っていかれるのに
Kさんだけを居間に引き留めることも考えものです。
Kさんが孤立感を持たなくて済む様に配慮しながらも、床に就く時間を遅らせる。
そして、仮に深夜帯に目覚め、居室から居間に出てみえる場合は、またご本人が眠くなるまで居間でお相手する。
ゆっくりとのんびりした会話でもさせて頂ければ、10分程度で眠くなってくるものです。
認知症の人のケアの現場では、いろいろな地雷が存在する。
プロの現場にもあるし、家庭、地域の中でも、どこにでも存在する。
もう少し詳しく、その状況を説明すると、
軽度の認知症の人と健常な高齢者の混ざった集団の中で見受けられる状況である。
軽度の認知症の人ってのは、日常会話や井戸端会議において、認知症を感じさせることもなく
周りの人が、その人に認知症があると認識しにくいのが災いするケース。
この事例も、似たような事例で、井戸端会議の場で特定に人の悪口、噂話など
それらの内容、発信元、対象となった人物等がごちゃまぜになってしまう事がある。
とても不確実な情報も、さも確実な話として他者に伝えたり
自分には何も関係ないにもかかわらず、自分が受けた被害のように語ったり、訴えたりする事。
これらの行動は、認知症によって管理、計画、判断や問題を解決する能力の低下した症状として
認知症の人の中核症状である記憶力の問題が原因しているのです。
このような状況下で、周囲の人は、時として悪者に仕立て上げられたり、えん罪を負ったり等
精神的にいろいろな痛手を被ることもあります。
相手は認知症の人です。その人の発現の全てを否定し、聞き入れないことはよくないとしても
本人の訴える事象の全てに関して、冷静に客観的に判断することが求められます。