認知症の人のケアで、誰もが対応に困る帰宅願望についてお話します。
帰宅願望って言葉自体、最近は使わなくなってきてますが、
施設に入所されている方だけでなく、自宅にてケアを受けている方の中でも
「家に帰らせてもらいます・・・」ってのもあるのです。
この言動の根本には、認知症の人の中核症状である記憶の障害、見当識の障害が関係します。
自分が今いる場所が分からなくなり、今の状況を理解できず、時間も季節も見失ってしまえば
誰だって不安になります。私たちでも、健康不良の折に時間も場所も分からないような状況では
不安感からイライラが起こります。認知症の人にも同様の不安感、イライラが発生します。
この不安感、イライラを削除出来れば、家に帰る!思いは緩和されます。
この不安感解消、イライラ解消の方法を見つけることが難しいのですが、
とにかく、帰りたい気持ちを否定しないこと!
そんなイライラ感を共有することから始めます。
相手の気持ちに寄り添いながら、今の現状を説明し、心配することもない!と思ってもらえるように働きかける。
帰宅願望に対する支援は、介護側に根気を要します。
じっくりと諦めず、繰り返しの言葉かけになりますが
その人の思いに寄り添って、共に寂しい、不安な状況を分かち合いうつもりで話を聞いてもらうことです。
カンファレンスってご家族には馴染みない言葉かもしれませんが、私たち介護職にとっては
非常に重要で、その時の認知症の人のケアの課題等を検討し、介護方針を共有するために
非常に重要な会議となるのですが、このお話は、そんなカンファレンスの中で出てきた面白い(?)
事例をご紹介しようと思います。
今、介護の現場で困っている事、何かありますか?と言う問いかけに
実は、Kさんですが、深夜の12時、1時に居室から起きてくるんですよ・・・
『そうですか、深夜に居室から徘徊のスタート・・・?」と聞いてみると
それほど大した問題ではないのですが、良質な睡眠がとれていないようで心配で・・・と返ってきた。
それで、Kさん、日中に居眠りや昼寝等の睡眠をとることはあるのですか?と聞いてみたら
日中に傾眠することなく、ずっと活動しているらしいのです。
それでは、就寝は何時ですか?と聞いてみたところ、夕食を食べ終えて直後の6時半~7時頃だと言う。
ここまで話を聞いていただければ、私が言おうとすることをご理解いただけると思いますが、
カンファレンスの参加者にお話ししたのは、夜、早い時間帯から寝床に入れば
誰だって夜中に目覚めますよ!
レム睡眠障害やら、昼夜逆転等の雑多な情報ばかりで、逆に単純明快な回答に行きつかなかったようです。
僕は、こんな職員を責める気にはならず、共に笑いながら、いたって健康的な認知症のKさんの生活を
これからも大切に見守ってあげたいですね!と締めくくった。
さて、このような場合、私ならこうする!と言う方法を解説するなら
出来る限り就寝時間を遅らせる。夕食後の団欒の時間を長くする。しかし、周りの人も結構早くから居室に入っていかれるのに
Kさんだけを居間に引き留めることも考えものです。
Kさんが孤立感を持たなくて済む様に配慮しながらも、床に就く時間を遅らせる。
そして、仮に深夜帯に目覚め、居室から居間に出てみえる場合は、またご本人が眠くなるまで居間でお相手する。
ゆっくりとのんびりした会話でもさせて頂ければ、10分程度で眠くなってくるものです。
認知症の人のケアの現場では、いろいろな地雷が存在する。
プロの現場にもあるし、家庭、地域の中でも、どこにでも存在する。
もう少し詳しく、その状況を説明すると、
軽度の認知症の人と健常な高齢者の混ざった集団の中で見受けられる状況である。
軽度の認知症の人ってのは、日常会話や井戸端会議において、認知症を感じさせることもなく
周りの人が、その人に認知症があると認識しにくいのが災いするケース。
この事例も、似たような事例で、井戸端会議の場で特定に人の悪口、噂話など
それらの内容、発信元、対象となった人物等がごちゃまぜになってしまう事がある。
とても不確実な情報も、さも確実な話として他者に伝えたり
自分には何も関係ないにもかかわらず、自分が受けた被害のように語ったり、訴えたりする事。
これらの行動は、認知症によって管理、計画、判断や問題を解決する能力の低下した症状として
認知症の人の中核症状である記憶力の問題が原因しているのです。
このような状況下で、周囲の人は、時として悪者に仕立て上げられたり、えん罪を負ったり等
精神的にいろいろな痛手を被ることもあります。
相手は認知症の人です。その人の発現の全てを否定し、聞き入れないことはよくないとしても
本人の訴える事象の全てに関して、冷静に客観的に判断することが求められます。
認知症の〇〇さん、80歳、女性、要介護3
ADL(日常生活動作)は自立。記憶の障害だけが著しく日常の生活に影響している。
ぼくは、この〇〇さんが好きで、いつもお話しを共にさせて頂いている。
研修等で取り上げられる「認知症の人」そのままを現実化したような〇〇さんですが
ときどき、周りの人を困らせることがある。
繰り返しの行動である。
デイサービスを利用される〇〇さん、一旦スイッチが入ってしまうと、何度も自分のカバン、コートを確認するため
席を立ってしまう。別に歩行自立だから、歩き回ることは問題ないものの、やたらとコートハンガーにかかっている
他の利用者のコートなどに振れるものだから、コートの所有者からは嫌がられる。
または、隣の席の重度の認知症の△△さんの世話を焼きたがる。
マスクが外れているという指摘ならともかく、その人の容姿についても質問したがる・・・
眉毛が濃いだの、腕が太いだの・・・といった具合である。
相手の方も重度の認知症を持っているので、嫌な顔せずに受け止めてくれているものの
やはり介護する側からすると、他者の事を話題にすることには避けてもらいたい。
これらの問題点も、一日中と言うわけでなく、時としてスイッチが入った時だけ。
普段はおとなしく席について、軽作業にいそしんでもらえている。
他者に対して攻撃的でもなく、自分自身も何にも卑下することなく
とにかく大らか。人間がでかい。と言うのか、おおざっぱな処があって
細かなことを気にしないタイプなのだ。
自分自身でも、主治医を受診して認知症 !と言われた!平気な顔して言うくらい。
残念ながら、ご主人は数年前にお亡くなりになった。
でも、本人の中では、ご主人はまだ存命で、どこかで一人で生活していると思ってる。
今でも、あまり周りの人に関わりすぎると、ご主人に言うよ!と注意すると
笑ながら、助さんはこわいでな~ぁ!と言われる。
認知症となって不安感も強く、そんな自分を卑下して暗い顔している認知症の人に比べると
〇〇さんの認知症はとてもポジティブな認知症だ。
こんな風になりたいと願っても、此ればっかりは、その人の性格や生活歴等が
大きく影響しているので、自分でコントロールしてなれるわけではない。
しかし、世の中には、本当にいろんなタイプの認知症の人がいる。
今日の午後のレクリエーションの場を覗いてみた。
皆さん、必死になって、競い合うように新聞紙を手で切っている。
最初は意味が分からず、その様子を眺めていたが
次第に、皆さんの様子から、新聞紙一枚をつなげて切って長さを競うつもりらしい・・・
時間制限もなく、人によってスピードも違えば、切る方法も異なる中
結果的に認知症のあるなしに関わらず、最長記録を競うことが出来た。
認知症のあるなしに関わらず。と言ったが、認知症でも中度、重度となると
この紙を切る行為を維持できない、また、繋げていく行為も出来ないので
このゲームに参加できる認知症の人は、記憶に多少の障害がある程度の人。
事の経緯を見守りながら、これ結構面白いぞ!と感心しながら見守っていた。
最長記録は約18m。次に軽度の認知症ある人の14m。
この企画、結構面白いと思いませんか?!
高齢者の睡眠について、分かっているようで、なかなか若い者には伝わらないような気がします。
高齢者=私自身も同じくですが、顕著にこの睡眠トラブルに悩まされています。
私自身を例に説明させてもらえば、事務職ですから特にハードな肉体労働はありません。
小さな事業所ですから、一日を通して歩く距離、歩数も多くありません。
かろうじて一日を通して酷使するのは、パソコン画面を見ている時間長く
目の疲労は人よりも強いのではないかと思える程度です。
普段、就寝時間は夜の10時から12時の間に眠くなって寝てしまう。
しかし、夜中の3時、4時には目が覚める。
サッカーのワールドカップを観るためでもなく、
何となく目が覚めてしまう。
ここから二度寝したとしても、しっかりと睡眠をとるわけでなく
何となく意識が遠のいていったレベルの睡眠ですから、夢を見る。
結果的に熟睡している時間は、数時間程度。
これでは、体の疲れはとれません。当然のように寝起きがスッキリしない。
スッキリしなくとも仕事ですから、起きなければならない。
私たちは、高齢者の要介護者の睡眠障害に対して、日中の活動量を増やしましょう!と、
言っていますが、活動量と言っても、本当にヘトヘトの状態まで運動することは
高齢者、特に後期高齢者や要介護者には厳しいハードルです。
頭を使う体操を増やしたところで、余計に覚醒してしまい。寝つきが悪くなる。
歳をとると言うことは、本当に身体・メンタルの両面でコントロールが難しいのが実情です。
適切な睡眠をとれる人は長生きする。なんとなく分かるような気がします!
椿の草餅です。これ最高にうまい!ですね。