先日、奈良公園の鹿をボウガンで撃ち腹部に矢の突き刺さった鹿が発見され、後に死んでしまった話は記憶に新しい。本日のYahooニュースでは、その犯人が逮捕されたと言う報道が流された。この事件は天然記念物の奈良公園の鹿を殺した大きな事件として報道されたが、天然記念物である重要性よりも何よりも、生き物を単なる好奇心だけの狩猟目的で殺害してしまう神経の持ち主に驚いてしまったニュースであった。
非常に残念な話であるが、この犯人は同じ三重県の人間で津市に住む青年であった点でも、非常にショッキングなニュースであった。詳しい情報については他の媒体を通じて取得して頂きたいが、普通の精神状態では生き物に向けて矢を射るという考えは浮かんでこないし、実際、いざ対象となる生き物に照準を合わせて危害を加えるという行動自体、私にはまったく理解できんない。それが、ペットとして自分が愛玩する対象物でなくとも、自分と同じように呼吸し、脈を打ち、体中に温かな血液が流れる生き物を殺害するかもしれない行為に及ぶ神経が理解できない。
随分以前の話であるが、津市の奥にある錫杖湖の湖岸道路を走行中、突然道路脇の山の中から大きな鹿が飛び出してきた。車の前方に突然飛び出し、危うく衝突しそうになった経験がある。その時はスピードも遅く、衝突は逃れたが、次に猟犬らしく犬の大群が表れ、鹿はそれらの猟犬から必死に逃げている途中であったと後になって察した事があった。あの時、鹿は死に物狂いで逃げていた。フロントガラス越しに、私も突然の飛び出しに驚き、相手も猟犬と、衝突しそうな車にも驚き恐怖に引き攣った目がとても印象に残った。
鹿は、道路を横切り、そのままガードレールを飛び越え、崖を滑り落ちるように湖に落ちて行った。その後、その鹿がどうなったかは知らない。猟犬から少し遅れて鉄砲を持った猟師が湖を必死に泳ぐ鹿を追いながら、仲間の猟師と無線でやり取りしているところで私はその場を立ち去った。今でも、あの時の鹿の恐怖に引き攣った目を思い出すと、人間としてとても残虐な面を悲しく思う。
山で猟をする人以外の日本人の大半は、動物を趣味として殺傷出来る人は少ないと思う。だからこそ、未経験の領域への興味がわきあがる気持ちになるのかもしれないが、道具を使いこなせる能力を与えられた人間である特権を弱いものに向ける愚かな行為は避けたいものだ。