東北の震災被災者の高速料金無料措置が、高速道路の料金所での大渋滞の原因となり社会問題化しているそうだ。現政権は、政権奪取のときから高速道路無料化を唱えており、政権をとってから以降、公約に近づけるために全国の高速道路を部分的に無料化をすすめてきた。今回の東北自動車道などの路線で、被災者は被災証明書の提示で高速道路が無料になるという。何の目的とメリットをもって被災者が高速利用料が免除されるのか?僕には、その目的と有効性が理解できない。震災被災者を支援することは素晴らしいことである。しかし、目先の利益だけが目立つ施策というのは、兎角、実体の伴わないスタンドプレーと酷評されやすいし、まず第一に目立つ施策ほど軽く見られがち。そんな施策も、ひょっとしてアメリカの高速道路、いわゆるフリーウエイ(タダの道・・・?)を目標に、日本全国の高速道路を無料にすることで、国民の生活を活性化させる狙いがあるのかもしれない。しかし、アメリカの高速道路と言っても、アメリカで車を運転した事のある人なら理解できると思うが、アメリカの高速道路って、思うほど整備されている道路では無い。
地域的にフリーウエイを見てみると、確かに日本のそれよりも車線幅は広く、車線数も多い。特に大都市のロサンゼルスやサンフランシスコの都心部に近くなると、極端に車線数が多くなる。サンフランシスコの都心に入る高速道路は南からは101ベイショアー・フリーウエイ、280号線(John F Foran Freeway)に代表される大動脈がシスコの街に直結。車線数も片側5車線。立体交差も多く、慣れない人には、迷路のような高速道路網が確立されている。ロサンゼルスにしても、都心から空港、ベッドタウンから空港などの重要な路線には、日本以上に整備された高速道路が張り巡らされ、朝夕のラッシュ時には5車線、6車線もベンチュラフリーウエイ,サンディエゴ・フリーウエイなども、入る隙間の無い程の車の列が続く。
しかし、この高速道路網も言ったように都心部の一部区間だけで、それ以外の高速道路は片側二車線程度。路面も荒れて、50年代のモータライぜーションに建設された高速道路も、部分補修の繰り返しで継接ぎだらけ。また、車検整備の法的義務もない国であるからか、高速道路のいたる所に故障車が放置されている。路側帯は土地に余裕のある国だけに充分な広さをもっているので、放置された故障車も邪魔にはならない。しかし、広大な土地だけに管理するにも費用がかかりすぎるのか、道路上に落し物やゴミは溢れ、高速走行をするには、前方の障害物に注意しないと危険な場面は多い。
アメリカは自由の国。何をするにしても基本は自己責任。同時に訴訟王国。何でもかんでも相手を訴える裁判が多い国でもある。他人から訴えられないように、問題に絡む事の無いように国民は他人事には首を突っ込まない。そんなドライな国民性のアメリカである。高速道路を走行するには、それなりのリスクを運転手自身が負いながら自由に使っている。
かくいう自分もアメリカ滞在中や旅行中は、自動車を運転する。移動には飛行機と乗用車を使う。一般道からフリーウエイを乗り継ぎ目的地まで移動する。なんせ広い。旅行するにも時間がかかる。高速道路が無ければ、尚の事時間がかかる。例えば、ロサンゼルス市内のホテルからマリナデルレイのヨットハーバー沿いのシーフードレストランまで約30~50Km。高速道路網が整備されているから20~30分程度で到着する。高速道路と言いながら、日本で言うバイパスのような役目を担っているのがアメリカの高速道路である。
しかし日本の高速道路は、落下物もなければ故障車も放置されている事は無い。例え運悪く車が故障した場合はJAF等のレスキューシステムが整備されており、数時間後には回収されて安全な場所へ移動されている。分離帯の植栽も手入れされ、路面状況も最高!とてもスムーズな運転が約束されている。あまりにも運転手に負荷がかからない配慮のせいで、逆に運転している緊張感も減少し、運転すら他人任せの感情が芽生えて居眠り。そんな事故が日本の場合は多い。
長い文章となったが、アメリカの高速道路網は、日本のそれとは根本的に利用目的と存在理由が違う。日本の点と点を結ぶ道路網に比べアメリカの高速道路は面と面と言われるくらい広く、多方面に張り巡らされた道路網では、無料の意味が違う。日本の政治家さん達は、そんなことはまさにお見通しの事と思うが、その割には理想とする姿に独自性がみられない。